めずらしい―裁判官が退官後に担当した裁判の内容について論評するのは(原発訴訟関連)
2021年3月11日、そうあの日から10年目に一冊の本が出版されています。それは、元福井地裁裁判長の樋口英明氏による「私が原発を止めた理由」(旬報社刊)です。この方は、関電大飯原原発3・4号機の運転差し止め判決(2014年5月12日)、関電高浜原発3・4号機の再稼働差し止めの仮処分決定(2015年4月14日)を出しております。
この本には、原発の運転が許されない理由として、次の5点が示されています。
- 原発事故のもたらす被害は極めて甚大。
- それゆえに原発には高度の安全性が求められる。
- 地震大国日本において原発に高度の安全性があるということは、原発に高度の耐震性があるということにほかならない。
- 我が国の原発の耐震性は極めて低い。
- よって、原発の運転は許されない。
この本の中には、4点目の耐震性について、原発は三井ホームや住友林業による一般住宅よりも耐震性が低いという驚きの事実が述べられております。このようなことが、現在日本にある原発の多く(全て?)にあてはまるなら、原発を基本電源の一つと位置付けるという現行の政策は誤っていることになります。
この日本で、科学的に物事を判断することが、最近すこぶるオザナリにされております。東日本大震災を経験した日本においては、原発についても、もっと科学的に捉えて政策を決めてほしいものです。