権利の共有についての特許法と著作権法の違い(‘ω’)
知的財産権の中に、特許権と著作権がありますが、権利が共有になったときに、権利行使の段階でビミョーな違いがあります。法律を作る人たちには、後の人にとってシンプルでわかりやすくするといった基本的な配慮が欠けているのかも?
①特許の場合
- 共有者本人の実施は、基本的に他の共有者の同意が必要なし(特許法73条2項)
- 第三者への実施許諾は、基本的に他の共有者の同意が必要(特許法73条3項)
- 第三者への自己の持ち分譲渡は、基本的に他の共有者の同意が必要(特許法73条1項)
- 第三者により共有特許権が侵害された場合、単独で自己の持ち分に基づく差止請求、損害賠償請求が可能(民法252条(共有物の管理)但し書き=保存行為は、各共有者がすることができる)
※実施許諾と、差し止め請求は全く違う扱いとなっていますが、実務上は、実施許諾の交渉がこじれて、差し止め請求や、損害賠償請求をする場合もあり、逆に、差し止め請求や損害賠償請求交渉の後に、実施許諾契約を締結する場合もあり、個人的には、昔から違和感があります。
②著作権の場合
- 共有著作権は、共有者全員の合意によらなければ行使(「積極的行使」の意味)することができないものとされている(65条2項)。その「積極的行使」の一つには、著作権の第三者への利用許諾が含まれるほか、著作物を共有者自らが利用することも含まれると考えられている。
- 第三者に自己の持分譲渡するなど、著作権の共有持分を処分する場合、共有者全員の合意を得る必要(著作権法65条1項)
- 共同著作物の著作者人格権の積極的な行使(公表、氏名表示、同一性保持権の行使)は、共有者の同意が必要(著作権法64条1項)
- 共同著作物についての著作権の消極的な行使(第三者侵害による差止請求、損害賠償請求)は、自己の持ち分に基づき単独で可能(著作権法117条)
※自己実施(著作権法では「利用」という)の場合、特許法と違って他の共有者の同意が必要となることは注意を要する。著作物を共有名義としたときの契約書に、著作権法の規定とは異なる条文であって、実務上、不都合が起きない規定を定めておくことが肝要です。
ムムッ~、奥が深い (*´▽`*)