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権利の濫用は、これを許さない。-民法第1条(基本原則)第3項

法律を勉強する際に、すぐに出てくる権利の濫用のお話ですが、現行民法では上記タイトルの通り条文になっています(当時の民法にはありませんでした)。

そのもととなる判例(大審院、最高裁の前の組織)があり、事件のおきた場所(宇奈月温泉)に、先日行ってまいりました(温泉につかりにですが)。

事件の解説は、いろいろなテキストにありますが、温泉のお湯を引く木のパイプ(木管)が通過する土地の所有者となった人が法外な値段を温泉の所有者に吹っ掛けたというものです。

ダメですよね! 以下が大審院判決の引用です。

「所有権ニ対スル侵害又ハ其ノ危険ノ存スル以上,所有者ハ斯ル状態ヲ除去又ハ禁止セシムル為メ裁判上ノ保護ヲ請求シ得ヘキヤ勿論ナレトモ,該侵害ニ因ル損失云フニ足ラス而モ侵害ノ除去著シク困難ニシテ縦令之ヲ為シ得ルトスルモ莫大ナル費用ヲ要スヘキ場合ニ於テ,第三者ニシテ斯ル事実アルヲ奇貨トシ不当ナル利得ヲ図リ殊更侵害ニ関係アル物件ヲ買収セル上,一面ニ於テ侵害者ニ対シ侵害状態ノ除去ヲ迫リ,他面ニ於テハ該物件其ノ他ノ自己所有物件ヲ不相当ニ巨額ナル代金ヲ以テ買取ラレタキ旨ノ要求ヲ提示シ他ノ一切ノ協調ニ応セスト主張スルカ如キニ於テハ,該除去ノ請求ハ単ニ所有権ノ行使タル外形ヲ構フルニ止マリ真ニ権利ヲ救済セムトスルニアラス。即チ,如上ノ行為ハ,全体ニ於テ専ラ不当ナル利益ノ摑得ヲ目的トシ所有権ヲ以テ其ノ具ニ供スルニ帰スルモノナレハ,社会観念上所有権ノ目的ニ違背シ其ノ機能トシテ許サルヘキ範囲ヲ超脱スルモノニシテ,権利ノ濫用ニ外ナラス。」

(大審院第三民事部判決昭和10年10月5日民集14巻1965頁)

この温泉は、冒頭の写真にある通り、法律を学ぶ人たちの聖地ということです!
宇奈月神社で毎月1日の10時から12時の間「権利ノ濫用除お守り」を授与してくれるのですが、参拝者が多く後日発送ということで、まだ手に入ってません(笑)